ゆりの花粉

花粉の季節。

花粉の季節になるといつも、おばあちゃんの家の玄関の棚に飾ってある白いユリの花を想い出す。

ユリの花の雄しべには花粉がたっぷりついていて、それをそっとつまんで、艶やかに伸びる粘膜のついた雌しべにこすり付けるのが私のルーティンワークだった。

いわば人工授精だけど、あのふわっふわのふるいにかけた小麦みたいに軽い花粉の粉が、ねとねとした水っぽい粘膜につくあの瞬間に何とも言えないぞくぞく感があって、いけないことをしているみたいでうっとりしていた。

 

このふわふわーねっとりのギャップ、ふわふわをねっとりにこすりつけてしまう残酷さ、頭が真っ白になるような気持ちよさがあるんだな。うーん。

他人のブログ

ブログを書き始めたわけだけれど、とある知り合いのブログの文体が好きで、この人はいい表現を使って書くなぁと心の中で感心していた。ある日彼のブログについて彼氏と電話で話していた時に、彼氏が何気なく「彼は文章を書くのがうまいよね」とつぶやいて、同じことを感じていたんだと思うと彼氏のことがますます好きになった。

カシス・ソーダ

去年行った前の会社の同期との旅行で余ったカシスリキュールを使って、カシス・ソーダを作った。大きな氷をトングで入れて、すこしマドラーでかき混ぜたらごくごく飲む。

 

あの雨の日、お腹がひどく痛くなってしまって皆と一緒に夜の海辺の花火をすることは断念して、ひとりペンションの湿った敷布団の上でぐるぐる渦巻をまいた猫みたいに丸まって寝ていた。

 

カシス・ソーダを飲むだけで今、あの日の楽しい雨の日の孤独を想い出せる。お腹は痛いけれど、なんだか楽しいなと思っていた。

あの中の誰も、私が一人で楽しい時間を過ごしていたことは知らないだろう。